道は緩やかな登り坂になっていた。
私はリヤカーを押してあげようか迷ったけど、コートと手袋が汚れちゃうからやめた。
男も手伝ってとも言わないし、辛そうでもない。
だからほっとくことにした。
10分ほど歩くと、体がポカポカ温かくなってきた。
そして、海が見渡せる高さまで来ると、朝陽を浴びた水面がキラキラ輝いていて、気持ちがいい。
思わず溜息がこぼれる。
「どうですか? 綺麗でしょ?」
男は振り向きざまに声をかけてきた。
「え、ええ。とっても」
男はニコッと微笑むと、また前を向いてリヤカーを引っ張る。
ちょっぴり悔しい。
男のペースにはまっている。