「さて、これに乗りますか?」
「えぇぇぇ!!」
石階段を上り小さな駐車場に着くと、リヤカーが一台置いてあった。
「これに?」
「アハハ、冗談ですよ」
愉快そうに笑う男。
こっちは全然おかしくない。
男は笑いながら、ズタ袋をリヤカーに乗せるとゆっくりとリヤカーを引っ張り出した。
私は男に付いていく。
なんで?
なんでこの男に付いてきたんだろう?
もしかして、危ない男かもしれないのに。
変質者とか、殺人犯とか。
今なら引き返せる、と思っていても、それが出来ない。
パンが食べたいわけでもない。
この男に惹かれたわけでもない。
自分でも理由が分からない。
だから付いてきてしまったのかもしれない。