桜子さんの瞳が嬉しそうに瞬くたびに、海鳳の戸惑いが背中から感じる。  結婚式の時もそうだった。

いつだって冷静で柔らかい笑顔を浮かべる海鳳が、桜子さんに会う時だけ不自然になる。

いつもちっとも心が揺れているように見えない人なのに、彼女に会う時だけシーソーみたく心がゆらゆらと傾いていく。

「海鳳っ!」

思わず大きな声を出して、もう片方の彼の腕を強く掴む。
すると桜子さんはハッとした顔をして、海鳳の腕を離して私の方を向いて微笑んだ。

「雪穂さんも結婚式ぶりね。会えて良かった。元気そうね」

こほんと桜子さんの横に立っている旦那さんが咳ばらいをして、桜子さんの身を自分の方へと寄せる。

「桜子、こんな場所で話し込むのも失礼だろう。 海鳳君も雪穂さんも久しぶりだね。今度ゆっくり話をしよう。
じゃあ、私達は帰ろう。 おじさん達もお邪魔しました。」

そう言ってぺこりと頭を下げると、桜子さんの腕を掴んで歩き出した。

「海鳳、またね?」

「ああ、また…」