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私達が家に着いた丁度その時、その人達は帰ろうとしていた。

扉を開けた瞬間海鳳の動きがぴたりと止まり背中に激突する、顔を上げると見た事もないような険しい顔をするのだ。 

「海鳳?」

「……桜子」

結婚式で会った時も、直ぐに彼の目が奪われるのを感じた。 いつだって海鳳は優先的に私を見つめてくれるけれど、この人がいると違うのだ。

彼の全てが一瞬にして奪われる。 それは焦りにも似た恐怖だ。

隣には共に結婚式に参列していた線の細い、神経質そうな夫がいる。
桜子さんは長い髪をなびかせながら、当たり前のように海鳳の腕を掴みはにかむ。

「海鳳、久しぶり。 今日実家に来るっておじ様達に聞いていたけれど、まさか会えるとはね。」

「ああ、桜子久しぶり。どうしたんだ?今日は何か用事があって?」

「ええ、主人がこの間海外出張に行ってたんだけど、おじ様達にお土産を買ってきてたの。
海鳳達が夜から来るからって言うから、会えたらいいなって話をしていたんだけど、今丁度帰る所だったの。でも会えて良かったわ」