お風呂から上がり、再び館内をうろうろと歩く。

’海鳳、もう上がったかな…’そんな事を考えながら、お土産屋さんを回ったり館内にあるライトアップされたお庭を散策していた。

せっかくの誕生日なんだから楽しみたいのに、そわそわした気持ちが止まらない。桜子さんと会ってから胸のもやもやが一層募った。

館内の庭にはライトアップされた日本庭園の緑が続いていく。

石造りで出来た階段をゆっくりと降りながら、その風景を楽しんでいると石段の上で座り込み何かを話している桜子さんと海鳳の姿を見つけてしまったのだ。

思わず木の陰に隠れ、二人の様子を生唾を呑み込みながら見守る。  今すぐにここから離れたかったのに、足が石のように重く動かない。

「―――っ…」

「だから――」

少し離れているから、二人の会話がよく聴こえない。
でも親密そうに身を寄せ合って、真剣な顔をして話をしている。