二十時、パソコンに向かい翌日の外来患者さんのチェックやスライド作成をし、データ集めをしていると時間はあっという間に過ぎていく。

それでも研修医よりかは自分の時間は格段にある。 一通り仕事を終えて病院を出て自宅へ向かう。
帰りにコンビニに寄って新作のスイーツを一つだけ手に取った。

いつから家へ帰る事が楽しみになったのだろう。 よく覚えていない。ごく自然に芽生えていった感情だったから。

インターホンを押すと、中からバタバタと慌ただしい物音が響いて
扉に手を掛けた彼女は、大きな目を細めて口を大きく開けて笑う。 人前で笑顔を作るのが苦手な俺とは違って、自然で曇り一つない朝の光のような眩しい笑顔だ。

「おかえりなさいっ!」

彼女の’おかえりなさい’を聞くと、肩の力がふっと抜けていくから不思議だ。

「ただいま、これお土産。コンビニだけど」

「えぇ~?新作のスイーツ?超嬉しい! 海鳳ありがとうね!」