「えっ…?!」

「まぁ、仕方がない事だよ。早乙女先生のせいではない。 僕もカルテを見た限りは胃腸炎じゃないかなあーって思ったくらいだから」

「すいませんでした!自分の見落としです…。
もう少し症状を聞いて洗い直すべきでした。」

「あんまり気にしないで。こういった見落としはどんなに経験を積んだ先生にもよくある事だから。
術後も良好みたいだから、決して早乙女先生のせいじゃないよ」

そう言って高塚先生は慰めてくれたけれど、こういった出来事が起こると気持ちが沈んでいく。
どんな事があっても見落としがあってはならない。人の命を預かっている職業なのだから。  自分ではどうしようもなかった出来事に直面するたびに、自分は医師には向いていなかったんじゃないかと何度も思う。

その日は一日気持ちが落ち込んだまま、外来をこなしていく事になってしまった。

こういう時は自分が医者に向いていない、と自分を責めたくなる。  たとえ取り繕ったとしても、内向的でネガティブな性分は中々変わらない。