「高塚先生、何かありましたか?」
高塚先生は小さな子供からは小人のおじさんと呼ばれている。
六十歳を迎えるのに現役ばりばりの医師で、白髪が特徴的だ。 だから子供曰く、小人のおじさんらしい。
しかし幕原中央総合病院きっての名医の一人でもある。
彼はお酒と煙草が好きで性格は真面目というよりかは親しみやすい。 けれど「困っている人がいればどこにいても助けに行く」それが彼の座右の銘らしい。
事実高塚先生はお金には全くならないボランティア活動で休日の大半を費やしたり、貧困医療にも興味があり無料クリニックで貧困に嘆く人々の診療を行っている。
街を少し歩けば、ホームレスにも気軽に声を掛けられるほど人々から尊敬されていた。 そして俺自身もそんな彼を尊敬している。
「一週間前に胃が痛いって外来にやって来た患者さんなんだけど
六十代の、痛い痛いって診察前にも騒いでいた男性の方なんだけど」
「ああ、あの胃腸炎だった俺が診察した方ですね。 薬を出しておいて様子を見ましょうって話しになってましたけど…」
「昨日緊急でやって来て、普段は高血圧もあってあまり血圧のコントロールもうまくいっていなかったようで
確かに下痢もしていたし、腹部エコーをしてみたら
大動脈瘤の切迫破裂で緊急手術になったんだよ」