「うーん……」

ぱちりと目を開けると、どうやら海鳳の部屋のベッドで眠っていたようで耳に懐かしいメロディーが揺れている。

まだぼやけた視界の中、海鳳の後ろ姿が見えた。

「ごめん、起こしちゃった?  雪穂、凪咲に飲まされ過ぎちゃって眠っちゃったから部屋に連れて来たんだ」

目を擦りながらゆっくりと立ち上がり、ピアノの椅子の隅っこに腰をおろす。

「大丈夫。続けて。  びっくり。海鳳もピアノ弾けるんだ。」

「凪咲と一緒に習ってたからね。 むしろ凪咲よりずっと上手だったんだ」

「海鳳は本当に何でも出来るね。 私、この曲好きだよ。 ドビュッシーの夢」

海鳳の長い指が鍵盤の上で踊る様に器用に動く。

「知ってるの?意外。 雪穂、クラシックなんか興味なさそうなのに」

「失礼だなあー。って、からっきしクラシックなんって興味ないんだけど、この曲は一番好きなの」