───え? お、おでこだけ? と、ちょっぴり残念な気持ちになっていると。

「お前、俺の仮の彼女で、おでこだけで我慢したんだからー。感謝してよねー」

ぎくっ!? ね、音怜くんってエスパー?
背中越しに片手をひらひらさせている、彼を見ながら私はそう思った。

「あと、ついでに言うけど、前髪ちょっと伸びてるー。ぱっつんとか、見て見たくもないけどー」
「え? ぱっつん? 音怜くんぱっつん好きなの?」
「それ自体きょーみはないけど、似合う子は俺好みかなー」
「わ、分かった! じゃ、じゃあ明日ぱっつんにしてくるね!」

音怜くんの後ろ姿は小さくなりつつある為、私は急いで彼を追いかけた。

バスケ部の朝練を見させてもらったあと、私と音怜くんは並んで廊下を歩く。
すると、たくさんの視線が、私と音怜くんに浴びせられる。

女子は、あからさまに悔しそうな顔で、ヒソヒソと話しをしている。
男子は、驚きつつも、冷やかすような声をだしていた。