すると、音怜くんは観念したのか、再びしゃがんだけど、顔は伏せたままだった。
「…………から、だよ」
「へ? 音怜くん聞こえないよっ………。あ、あのもう一回」
スルリと、彼の腕が伸びて、私の右手は彼の頬に触れた。
じんわりと、指先から伝わる熱。
ゆっくりとあげた音怜くんの顔は、今まで見た事ないくらいに真っ赤だった。
「優しいとか、かっこいいとかさー、言われ慣れてるのに、お前だけが言うと
なんだか、どーしよーもなくドキドキしちゃうからだよ」
赤い頬で困ったように、眉間にシワをよせている音怜くん。
その表情に私は思わずキュンとして、こっちも頬が赤らんだ。
音怜くんは手を放してくれたけど、まだ音怜くんの頬の熱が残っている。
ゆっくりと、音怜くんの顔が近づく。
私は、覚悟を決めて、目をつむった。
───ちゅっ。
リップ音がなったのは、私のおでこ。
今度こそ音怜くんは立ち上がって、さっさと行ってしまう。