教室に戻ると、もう1時限目の授業が終了している頃。
教室を見渡すと───、机に座っている音怜くんの姿がそこにいた。
相変わらずクラスのみんなに囲まれて、ごく普通にお喋りしている。
音怜くん───、思わず名前を呼びそうになった口を慌てて手で押さえつける。
私は素通りして、なんとか自分の席に座った。
ふぅ………、危ない危ない。
持っていたスクールバックを机の上に置いて、次の授業でつかう教科書を丁寧に
取り出す私。
すると、恐れていた声が耳に届いた。
「ねぇ、そういえば川高さんと音怜くん、別れたんだってよ」
「えーっ! そうなの! どっちから聞いたの!?」
「音怜くんに、最近彼女とはどう? って言ったの。そしたら『別れたー』って
あっさりそう口にしてた」
「ふーん、でも川高さんって、音怜くんと釣り合ってないよねー、まぁ、ただの
遊びだったってコト?」
グサリと、言葉が心に突き刺さる。
すると、ふっと机に影ができたことに気づいた。