ジェームズは食堂のあたりでニーナを探していたが見つからなかった。 それで食欲を失い、見るからにイライラと悔しがりながら寮に戻ろうとした。

彼はニーナの何がそんなに特別なのか自分の目で確かめるつもりだった。なにしろ、自分の叔父が一体どうやってあの女にしてやられたのかまだ理解できていないのだ。

しかもヘンリーが言うには、ジョンが打ちのめされたのは一度だけではないらしい。 そして、前回は顔に平手打ちされたと言うのだから、ますますわからない。

「うわ、痛そう!」ビンタされる痛みを想像して、ジェームズは思わず顔をさする。

ともかく、その二つの屈辱的な出来事は、それさえなければ輝かしいはずのジョンの人生に影を落としていて、両方ともニーナという一人の人物のせいらしい。

ジェームズは考えれば考えるほど好奇心をそそられ、ニーナを知りたくてたまらなくなっていた。 だから、今日彼女と知り合う機会を逃したのは残念で仕方なかった。

ジェームズは歩きながら、次にニーナに会うときは何が起こるか想像に耽っていた。

しかし、その想像は突然聞こえた女の子の叫び声に邪魔されてしまった。ジェームズはあたりを見回し、こちらに背を向けている背の高い姿があるのを遠くから見つけた。誰かの泣き声がなければ美しい光景だったに違いない。

ジェームズは最初、他人事に首を突っ込む気はなかったが、よく見るとその美しい女の子がニーナに他ならないと気づいた。

ニーナがまた誰かひっぱたいたのだろうか?ジェームズは何が起きているのか気になって様子を伺うことにした。

彼がつかつかと歩み寄るとイザベラが泣いているのが目に入る。 色白の顔には赤い手のひらの跡がはっきりと残り、目には涙を浮かべて、苦しそうに唇を噛み締めている。
とても哀れっぽい様子だったので、ジェームズは少し気の毒に思った。