他の女のことは頭になくて 私のことだけ想像しているって

どういうことかしら?

想像ってなによ?

ニーナの考えは纏まらない。

そして、ジョンの鋼のような表情を見上げると場違いな気がして 気恥ずかしくなり、早く立ち去りたいと思うばかりであった。

ジョンは自分が何を言っているのかわかっているのだろうか?

まったくいつからそんなに恥知らずになったのだ? けれども、彼はどうすればニーナを困惑させられるか良く知っているのだ。

ニーナはなんとか気持ちを落ち着けようと うっすら目を閉じ、心理学におけるイメージと会話のテクニックを使ってゆっくりと冷静さを取り戻そうとした。

一方、ジョンは黙ったまま見つめており、 ニーナの赤い顔がゆっくりと元の色に戻るのを目の当たりにすると大いにがっかりした。

ああいう風に言えばどんな女性だってドキドキさせられる、アドリアンはそう教えてくれたはずだ。

でも、うまくいかないじゃないか!

ジョンは落ち込んで表情も虚ろになり、 何が起きたのか分からないといった様子だった。 そして、携帯電話を取り出すとジェームズに向かって「おい、早くドアを開けろ!」と怒鳴った。 こういうとき犠牲になるのはいつもジェームズで、 何か上手くいかないことがあるとジョンは彼に当たり散らすのだ。

ジョンがきつく命令する声に続いて誰かがドアを開ける音がしたのでニーナは目を開けたが、 ジョンは目を合わせようともせずに彼女の脇を通り過ぎて行ってしまった。