彼女がジョンを騙したって?

ニーナは怒りで鼻を鳴らした。 そして、赤い唇を尖らせ、「騙したのはあんたの方じゃない!」と真っ当な憤りに駆られて言い返した。

しかしジョンは、「香水がなかったら、誰がおまえなんかと一夜を過ごすもんか。 俺がもっと美人を相手にできないとでも思っているのか?」と平然と言ってのけた。

「香水? どんな香水?」

それで、昨夜の出来事が全てニーナの腑に落ちた。 彼女は目を細め、「ねぇ、おじさん、それ私のせいじゃないんだけど、信じてもらえるかしら?」と尋ねる。

ジョンはまだ片手でニーナのあごをつまんでいて、どんどん痛みが増してきた。

彼はニーナの顔をそっと覗き込んだ。 彼女の涙に濡れた瞳には正直さがはっきりと見て取れ、まるで魔法で引き込まれそうだった。

そこで、ジョンはニーナの顎を放し、意味ありげ笑いながら、彼女に少し近づいた。

「で、信じてくれるのかしら?」
ニーナはそう考える。

「えっとねえ、わかってる? 私は既婚なのよ」と告げた。
この男とはもう縁を切りたいのだ。

「だから何?」
もちろん、ジョンはそんなこととっくに知っていた。

トラブルに巻き込まれるかもしれないので、そもそもニーナと連絡を取るつもりはなかった。 ところが再会してしまったから、彼は、ニーナがもう一度誘惑するために近づいたのではないかと疑っていた。

ジョンの無関心な口調を耳にしてニーナは腹を立てた。
「そういう趣味なわけ?」

この男は人妻と浮気するのが好きなのだろうか?

ジョンはニーナの質問をよく考えてみた。 彼には以前そんな趣味はなかったが、今は状況が変わった。
「試しにやってみて考えるのもありだな」

いままでジョンを愛した女性のほとんどは、見た目に関してさえ彼の高い理想を満たしていなかった。 彼女のような自分の横に並ぶことのできる美しい女性にそうしょっちゅう出会えるわけではない。