同時に、ジョンも彼女の指を一瞥する。 ニーナはすぐに指を隠したが、指輪がないのは明らかだった。

二人で一緒に過ごした夜を思い出して、ジョンは思わず勝ち誇ったような笑みを見せる。 そして、重苦しい気分も徐々に薄れていった。

どうやら、結婚は名前だけだったのだ。

ジョンの微笑みを見て、ヘンリーはホッとため息を吐いた。 ジョンもどうやら落ち着きを取り戻したようだし、もう大丈夫だろう。

「おい、どうして夫が好きだなんて言ったんだ?」 ジョンは邪悪な笑顔でニーナを見つめた。すでに喧嘩腰ではなかったが、今度は興味津々なのだ。

ニーナはどきりとして、ジョンが以前に言ったことを思い出した。

ジョンは自分が満足するまでニーナを断固放さないという、例の台詞だ。 つまり、満足するその時まで行かせる気はないのだろう。

ニーナは、権力者たちの多くは芯が腐っているのを知っていた。 彼らはエゴを満足させるために愛人を飼っているのだ。

しかし、この男はさらに変な癖があるらしく、 人妻ばかり追いかけている。

ニーナはそんな見え透いた罠には嵌らず、「おじさん、あんたには分からないわ。 私は夫が大好きなの。頭や身体や心に問題があるとしても、私は変わらず彼を愛しているってこと。指輪なんてどうでもいいじゃない」と言った。

「なんだって? ひどい話だ」ジョンの笑顔が消える。

彼の好みからするとニーナは恩知らずが過ぎる。

一方、ニーナはジョンの気まぐれが嫌いだった。 そして、彼から遠ざかるとなるべく離れたところに座ろうとした。