そこで、ヘンリーは二人をくっつけるという役目を果たすべく、緊張を和らげるために一つ質問をすることにした。

しかも、ジョンも答えを知りたがるに違いない質問なのだ。

「ルーさん、意中の人はいらっしゃるんですか?」

ニーナは答えなかった。

これは失敗! 期待した効果は得られなかったようだ。

けれども、ジョンは突然目を開くとニーナを興味深げに眺め出した。

ニーナが考えに耽っているのを見ると彼は思わず鼻を鳴らし、「まだ考えているのか? じゃあ、あいつの事そんなに好きじゃないのか」と言った。

ジョンは少し嫉妬しているようだ。

一方、ニーナは質問を返すことにして、 「あんたは好きな人いるわけ?」と聞いた。

「いない」 ジョンは本心を隠そうとして声を荒げる。ニーナは気づいていないようだったが、ヘンリーには分かっていた。

何、いきなり叫んだりして?

私は耳聞こえるのよ。ニーナはそう思った。

そして、「ふうん、私にはいるわ。好きな人」と出し抜けに言った。 どういうわけか、ジョンが「いない」と言うのを聞いて不愉快だったのだ。「私は夫が好きなの」

は?

俺を挑発してるのか、このアマ?

夫がなんだって言うんだ。 あいつの処女を奪ったのはこの俺じゃないか。ジョンはそう思った。

二人はまるで戦場の戦士のようにお互い睨みあい、 結局、睨めっこになってしまった。

「ルーさん、これはまたご冗談を」 ヘンリーが割り込む。最近ジェームズと時間を過ごすことが多いので、今ではますます大胆になってきたのだ。

「冗談じゃないわ」

「あいつは冗談は言わない」