あるところに、小さな森がありました。
その森にすむ生き物たちは、話すことができたので、「特別な森」と呼ばれていました。

あるすがすがしい朝のことです。
ひとりの女の子が森の真ん中のお花畑に泣きながらやってきました。

木や花や蝶、動物たちが「どうしたの」「泣かないで」などと声をかけますが、女の子は泣いてばかり。
やがて空が赤くなり、女の子は泣きながら帰っていきました。

女の子は次の日も、また次の日も、森に来ては泣いていました。
女の子に声をかけても泣いてばかりいるので、森のみんなも、だんだん悲しくなっていきました。

ある日、森の声がしないと女の子があたりを見わたすと、森はすっかりげんきをなくしていました。
あんなに鮮やかで綺麗だった草木や花も、今では暗い色をして、しおれています。
蝶や動物たちは姿も見せません。
女の子は泣くのをやめてみんなに聞きました。
「どうしたの?みんな」

森の木々は言いました。
「君がずっと泣いているから、僕たちも悲しくて」
花々は言いました。
「私たちは、あなたにわらって欲しいのよ」
女の子は涙をふいて言いました。
「みんなの声、ずっと聞こえてたわ。みんなの声が嬉しくて、毎日ここに来たの。でも、私がみんなを悲しませてたのね。ごめんなさい」
女の子の目には、また涙が浮かびます。

そこへ、1匹の蝶がやってきて言いました。
「泣かないで?私たちは、ごめんなさいよりも、ありがとうが聞きたいわ。ほら、笑って?」
女の子は小さくうなずくと「ありがとう」と言って、花のように笑いました。

すると、森の木や花や蝶、動物たちが優しく光だしました。

その光は女の子を中心に森全体に広がり、森はげんきをとりもどしていきました。

げんきをとりもどしたリスが女の子に近寄り、聞きました。
「どうして泣いていたの?」
女の子は言いました。
「おともだちが遠くにいっちゃって、さみしかったの。ひとりぼっちになっちゃうから…。でも、もうさびしくないわ。あなたたちがいるから。わたしとおともだちになってくれる?」

すると、森の生きものたちは喜び、「もちろん」「よろしくね」などと口々に言いました。

女の子はもう泣いていません。
森のみんなと、毎日笑顔で暮らしています。