「羽花、こっちおいで」


 ヒールをそっと床に置き、痛い足でひょこひょことソファーに座る雷斗くんに近づく。


「ソファーにうつ伏せに寝転んで」


「は、はぁ」


 なにがなんだか分からず言われた通りにゴロンと寝転んだ。


 ギシッと足元からソファーの軋む音が聞こえた。


(ん?)


「ひゃあっ!!!」


 疲れ果てているふくらはぎにピタリと温かな肌の温もりを感じた。


「バイト終わりで疲れてるのにゴメンな。足、すげぇパンパンできついだろ? 今マッサージしてやるからよ」


「あ、ありがとうございます……」


 あんなに鬼のスパルタ特訓からの身体の気遣いに優しくて甘くて溶けてしまいそう。疲れ果てた私の足は徐々にほぐされ、大分張りが引いてきた。


 ふくらはぎから段々と上に上がり太腿もギュッと揉まれなんだか恥ずかしい。


(ふ、太腿はお肉がギュッとなって恥ずかしいですっ)


「雷斗くん! もうとっても楽になりましたから大丈夫ですよ! 本当にありがとうございました!」


 身体を起こそうと力を入れるが上から腰を抑えられ起き上がれない。


「あ、あの、雷斗くん?」


 顔を後ろにひねり雷斗くんを見上げるとニヤリと意地悪な笑みを浮かべている。ひ、久しぶりに見たこの恐ろしい笑顔に本能でヤバい、と感じた。


(な、なななな、何をしようと考えているのですか!?)