それから数日後、恵理は退院した。
毎日父が持ってきてくれたプリンを食べて、食欲も戻ってきている。

「新婚旅行に来なさい。待ってるから。」
退院したその日に、父は北海道に戻ることになり、宏貴と恵理は二人で父を見送ることにした。
「ぜひ。」
「向こうからプリンも送る。」
「楽しみ。」
毎日病室で顔を合わせていた3人の関係は明らかに深まった。

「体にきをつけて。無理はしないようにな。」
「お父さんも」
父は最後に遠慮しながら恵理の体を抱きしめた。

幼い子供を抱きしめるように頭を撫でた父。
その瞳が真っ赤に染まり、恵理は我慢できず涙を流した。

「娘を頼みます。」
深く深く頭を下げて、宏貴に恵理の体を預けた父。