「ピンポーン」
「…」
何も言われず、ただその家のドアだけ開けられてお母さんが顔を出した。
私がここに来ることを事前に伝えておいたからかもしれない。そこまで驚いた表情はしていなかった。
「…お母さん」
お母さんは前とほぼ変わっていなかった。それはそうかもしれない、きっとそこまで私が出てから時間が経っていないからかもしれない。
「とりあえず、入んなさい」
私は言われるがまま、黙って家に入る。
「で、そこの子は。あんたの彼氏?」
そ、そうだ。莉音のことを忘れてた。
「はい、坂口莉音と申します。もしよければ僕もお話に入らせてもらえないでしょうか…?」
「ああ。…入んなさい」
「ありがとうございます」
こうして、私たち三人は居間のテーブルに腰を下ろした。
「…まずは、私から話させてもらおうかしら」
まずはお母さんが沈黙を破ってきた。
「学校からは特に何も言われていないし、きっとこれからも言われることがないと考えているの。だから月果がしたいのであれば、これからも莉音さんと同居していてもいい。…莉音さんはどう?」
「もちろん僕もそのように考えています。お母様さえよければ」
「月果、あなたはどうしたい?」
「私は…」
まさかこんな風に話が変わるとは思わなかった。お母さんに不満をぶちまけられるのだと思っていたから、私の眉が少し上がる。