莉音がそんなことを言うなんて、意外だった。
「俺はずっと、そう思ってた。月果にはちゃんと両親がいて、…愛されているかはともかく、きちんとここまで育ててもらってるのが、…羨ましかった」
「どういう、こと…?」
まるで彼の言い草は、両親を亡くし愛されずに育ったといったように感じた。
「俺は愛樹っていう妹がいるって言っただろ?その妹が死んでから、一気に家庭が崩れたんだ。
前から話は出ていて、俺は盗み聞きしちゃったから前もって知ってたんだけど…両親が離婚して。俺は父親について行くことになった」
そう話し出した莉音の顔は曇っていた。
「その時は、父親から勘当されたような気分だったよ。中学に上がると同時に一人暮らしを強いられて、家に戻ることはほぼ許されなかった。お金は余分に渡してもらっていて生活に不便はなかったけれど、どこか寂しかった。
人の温かみのない食事を毎日摂って、家事は全て自分でやる。今まで感じたことのないくらい寂しい生活だった。お手伝いさんも呼んだりはしたけれど、やっぱり違うなって思って辞めさせた。
そのときくらいから人の温もりがほしくてたまらなくなって、女をラブホに連れて行ったりもした。妊娠させたことはないけど、何度もシた。