私は彼からそっと離れた。片方の手には何も残っていなかった。確かに掴んだと思ったのに…。 私は、確かにこの目で見た。 どこかの書類に、確実に『坂口莉音』の名前が記載されていたことを。 でも、手にすることができなかった。