「別に塔雅から直接聞いたことだから大丈夫。それに塔雅は俺くらいにしかそんなこと言わないから」
彼の悪戯っぽい目と私の目が、鏡越しに合った。もしかしたら塔雅さんはあまり人を信用しないのかもしれない。だったら尚更申し訳ない。私だってきっと疑われているのだろうと思うと、居心地が悪くなった。
「し、失礼ですがお名前は…」
「ん、俺?風磨。一応風神の幹部ではあるよ」
「…なんかごめんなさい…運転してもらって」
幹部だったらそこそこ偉い人なのだろう。そんな人にわざわざ運転させるなんて、私ったらどれだけ偉い人みたいに扱われているんだろう。
「んー、まあいいよ。坂口の彼女が誰か知りたかったし。あー、別にあいつのことは話さなくて良いよ?ただ、俺が単純にあんたについて気になるだけ」
私の表情を見て、風磨さんが付け足す。でも私はちょっと不貞腐れる。なんかこんなような会話、前もあったような気がする…。あ、鈴城くんとのときだ。
「まー、とりま俺の話し相手になってよ。はいレッツゴー」
「うえっ」
シートベルトをしていなかったまま急発進したので、ゴンと座席に頭をぶつけてしまう。
「いった…」
私が頭を押さえる中、彼はけらけらと笑う。
「ごめんごめん、俺運転荒いからさ」
「…」
ちょっと話して思った。この人、変だ。