「…」

仕方ないから、私はまず水を飲むことにした。水道水なら勝手に飲んでもいいだろうし。

…本当はダメなのかもしれないけれど、なにか刺激が欲しかった。

水道水はあまりおいしくはなかった。




「おはよう」

「おはよ。もうご飯できてるよ」

「…ありがとう」

そういえば私、ありがとうとしか言っていない気がする。

昨日良く眠れなかったことを理由にして、朝に起きられなかった。しかも泊まらせてもらっている身なのに、食事まで作らせるなんて…最低だ。

「ま、食べてみ?美味いから」

得意げな彼の顔が可愛い。

そんな彼を横目で見ながら、私は用意された朝食にありつく。

「おいしい…」

どうやら彼の言うことは本当らしかった。昨日しっかりと食事を取らなかったせいか、お腹までぐうっと音を立てて鳴り始める。

「いいぞ?かっ込め」

彼はくすくすと笑った。仰せのままにと言わんばかりに、私はばくばくと目の前にあるものを平らげる。その食事はすごく、温かかった。

「そういやさ、今日平日じゃん?学校大丈夫そ?」

ある程度食べ終わったあと、彼が尋ねてきた。

「…行かなきゃ」

でも、定期も財布もなにもないし、それにここから学校へどうやって行くのかわからない。

「学校どこ?」

「桜山高校」

「ふーん。あそこならここから行きやすいよ?家出たらまっすぐ行けば駅があって、そこから3駅くらいしたら着く」

「そうなんだ…でも私、お金持ってないし…」

「いーよいーよ。出すよ」

「申し訳ないよ…一回家に戻ってから行く」

「…大丈夫なのか?」