「ないけど」
「え」
「そこにソファーあるから、そこで俺が寝る」
「えっ、でも悪いよ…」
「いーから」
そう言われ、申し訳なく思いながらも私はベッドに潜り込む。
「寝るときって電気つける?」
彼がリモコンを持ったままそう聞いてきた。
「つけない。真っ暗」
「俺も」
そのあと、電気はふっと消えた。
でも外の電灯の光が差し込んでいるから、そこまで真っ暗ではない。彼の顔は見えないけど、どこにいるのかはわかるくらいだ。
「じゃ、おやすみ」
「…おやすみ」
そうは言ったものの、全く眠くならない。今日は殴られて身体的にも精神的にも疲れたはずなのに。突然自分の格好が寝るのに不便なことに気がついて、寝返りをうつ。
それでもおさまらない。お母さんは私のことを探してたりするのかな、いやそんなわけないか。あのときに、
「出て行け」
と私を追い出したのはお母さん自身だ。お父さんはきっとまだ海外に出張しているはずだからいない。
といっても、帰っていたとしてもきっと私には口を出さない。
もう私はダメな子だと分かりきっているからか。そう思うと悲しくなった。
涙は一滴も出てこないけれど、親からそんなふうに思われていると改めて自覚するのが怖かった。もう私はいらない子なんじゃないか、嫌なことがぐるぐると頭の中を回る。