「何?」

私が言いたいことはどうせ分かってるくせに、なんでそんなに純粋な表情ができるの…?

でも、この怒りを彼女にぶつけたって意味はない。

彼女は別の人が好きで、莉音は推し程度のものなんだろう。そう自分に言い聞かせた。




「あ。月果じゃん」

三駅ほど通り過ぎてから電車に乗り込んできたのは、慶弥さんだった。

タイムリーすぎてただただ驚くしかなかった。

「あ、あー…久しぶり」

「久しぶりだっけ?最近会ったじゃ…」

「それはたまたま目が合ったくらいでしょ⁉︎」

私は彼の言葉を遮った。凛咲ちゃんに心配をかけたくなかったからだ。

「それに今私友達といるの分かってる?」

「え」

彼は今凛咲ちゃんの存在に気がついたようだ。

「ああ…河合さん」

彼の表情がなんとも微妙になる。