「入りました…」

「はやくない?ちゃんとあったまった?」

私のことを心配してくれて…いるの、かな。

「大丈夫」

私は頷いた。するといきなり彼が近づいてきて、むにっと私の頬をつまんだ。

「えっ⁉︎」

「ちょっと風呂入っただけなのに顔色良くなったな」

「そ…そうなんだ」

自分ではわからないけど、彼がそう言うんなら私も知らぬうちに気持ちが軽くなっているのかもしれない。

「なんか食べる?チーズとかそんなんしかないけど」

「いいよ、そんな。お腹空いてないし」

「いいから食べとけ」

そう言って彼から押し付けられたのは、何処にでもありそうな6Pチーズ。

意外と好きだったりする。ついでにあたりめだとか酒のつまみになりそうなものも押し付けられる。

「…いただきます」

恐る恐る、口にする。

口にしたチーズは、やっぱり美味しかった。

私は他のものにも口をつけようと手を伸ばす。

「今日泊まる?」

それを聞いて、私はごふっとチーズを吹き出しそうになる。

「そんなこと…いいの?」

「だって俺、親と別居してるし。それに金ならいくらでもあるから」

「え、でも…」

「心配すんなって。別に俺欲求不満でもないし」

「…」

そんなことは微塵も考えてもいなかったのでスルーする。

「布団とかあるの?」

親と別居しているということは布団は一枚しかないだろう。