「とりあえず、風呂入っていいから」
「別にそんなことしてもらわなくても…」
私には何も返せるものがない。スマホもお財布も全て家。あるのは私の身体と、制服と、…そしてポケットに入っている櫛とリップくらい。
ふたつ合わせても千円しないくらいの安値なものだし、私の身体だって特に役立てるわけでもない。
「なんの見返りも求めてないから。風呂入って、それからゆっくりしてけばいーじゃん」
彼はタオルと着替えと共に、私を脱衣室に押し込んだ。確かにこれ以上ここでぼーっとしていても、床に水滴を垂らすだけだ。
私は
「ありがとう」
と言ってから、ありがたく風呂に入らせてもらうことにした。