何を言うのかと思えば、意味不明なお願いをされた。

会うのは今日限りではないってことなのだろうか。

「分かりました。お名前を伺っても…?」

「慶弥。フルネームは鈴城慶弥。一応さっき言ったんだけどなー。月果ってつくづく自分の男以外興味ないよね」

「いや、別にそんなことは…」

「慶弥って呼んで?」

ここでこう来る…??なんだかウブな少女漫画みたいなシーンみたいなんだと思ってしまうのは気のせいなのだろうか。と言っても私もウブだから何とも言えないのだが。

「分かりました、慶弥さん」

「ん」

さんはつけたものの、満面の笑みで返してくれた慶弥さん。

「送ってくれてありがと」

「うん、流石に家までは行けないけど」

多分莉音のことを気にした上でのことだろう。

「じゃあ」

わざわざ電車にまで乗って送ってくれた彼は、しばらくして振り返ると反対方面のホームでにこにこと手を振っていた。

…足速っ…。

そんなこんなで家に帰ると、部屋は真っ暗で。莉音も家にいないようだ。