「んもう、素直じゃないなあ。お金くらいなら出すけど」
「別にそういう問題じゃないし」
お腹も空いてないし、第一莉音の弱みになってしまったら元も子もない。
ただお荷物になるだけだし、そんなことはあってはならない。
きっと莉音は私のために『好きだよ』だなんて言葉をかけてくれたんだと思う。そんな彼の優しさを、一度だって踏み躙ってはいけない。
「まあまあ、そんなこと言わずに」
と半は強引に手を引かれてやってきたのは、彼の言った通りお洒落なカフェだった。
「え…」
「ほら言ったでしょ?俺だってそこまで悪いやつじゃないんだから。ただ族に入ってるからって差別しないで貰えるとね」
「はい…」
確かにすごく申し訳ないことをしてしまった。鈴城さんはただ私と話がしたかっただけらしかったのに、私は必要以上にびびってしまっていた。
「何頼む?お金だすから好きなものでいいよ」
さすがにお金を出してもらうのは気が引ける。でも経済的余裕があるわけでもないので、私は一番安いコーヒーを頼む。
「オリジナルコーヒーとエスプレッソで」
「はいよー」
私がまごまごしていると、さらっと注文してくれる。そんな彼はきっとモテるのだろう。
「何、俺に惚れちゃった?」
「そっ、そんなわけ!」