帆奈は別路線なのでここで別れ、私はいつもの電車に乗り込む。

「はぁ…」

電車に乗った瞬間、ため息が漏れる。

「ため息なんかつかないでよ」

「おうわっ!」

いきなり話しかけられ、私は三十センチほど跳び上がった。…追いついてたんだ。

「男子高校生の全速力をナメないでほしいな」

どんだけ速いんだろうこの人。帆奈とかは一応元運動部なのにね。私がいるから遅かったのかな、なんて思う。

「…何が目的なの」

「別に?俺はただ、君と話したいだけなんだけど」

どう考えても、黒曜とかいう族の一員なのだとしたら弱みを握ろうとしているだけにしか見えない。

「何で?何で私なんかに興味があるっていうの?」

と言うと、彼はにやりと笑みを浮かべる。

「そういうとこ。なんで坂口莉音の彼女が、こんなに自分に自信がない人なんだろうっていう疑問」

「…」

確かに、莉音と私は不釣り合いなのかもしれない。

「とりあえず降りよ」

私は彼の腕を引っ張って、ちょうど着いた駅で降りた。こんな話を電車の中でしたくはなかった。

「そ?この駅ならちょうどカフェもあるし、そこ寄ってく?」

「…別に」