「鈴城くん、そんなに食べるの…」

「うん。だってドーナツ100円って滅多にないじゃん!」

鈴城くんは綺麗に並べられたドーナツを目の前ににこにこしている。

私たちの前にはひとつのドーナツが堂々と皿の上を占領しているが、彼のドーナツはだいぶ窮屈そうだ。

食べ盛りの男子高校生の腹をナメてはいけなかったらしいと今更ながら気づく。

「それに朝練やって昼休みバスケして放課後軽く遊んだらぺこぺこだよ」

そう言いながら彼は一番端にあるドーナツにかぶりついた。プレーンか。

「ふぇふぁさあ、水無瀬はんって彼氏えきたの?」

普段だったらちゃんとものを飲み込んでから喋ってほしいだとかいうツッコミを心の中でできるはずだけど、恥ずかしくて咽せそうになってしまった。

「あー、その反応。絶対できたね」