朝起きると、莉音はもう隣にはいなかった。
きっと朝早かったのだろう。
キッチンを見てみると、食器が乱雑に置かれていた。
見たところ全部綺麗だから、ある程度早めに起きたのだろう。それにしても、まだ7時なのにな。
テーブルには私のぶんの食事がラップをかけられて置かれていた。
でもそれも質素で、ラップを取ってみるとパンにスライスチーズが置かれているだけだった。
相当急いでいたのだろう。
それでもちゃんと私の分まで用意してくれるのは嬉しい。
そして私はようやく、隣に置かれていたメモに気がついた。
『先行ってる』
090から始まる番号とともに、癖のある字でそう記されていた。これは、登録しろってことだよね…?
私はスマホを開くと、連絡先に彼の番号を追加する。
『坂口 莉音』
その名前を入力するのは、ひどく恥ずかしかった。