「なんであんたは…っ‼︎」

「痛…っ」

壁に押し付けられ、思いっきり殴られる。

「おかあさ…」

「そんな目で私を見ないで!出て行って!」

「でも…」

「出ていきなさい!」

乱暴に手を掴まれたと思うと、私はつんのめって転んだ。外では運悪く雨が降っていて、それが私の体だけでなく心をも濡らす。

「もうこの家の敷居は跨がせないから」

私が立ち上がる前に、お母さんはぴしゃりとドアを閉めてしまった。

「…っ…」

私はよろよろと立ち上がると、悪魔に追いかけられているかのように走り始めた。

「はあ…はあ…」

出ていきなさいと言われたのは私の方なのに、なぜか私は後ろを気にしていた。

ここならお母さんは来ないだろう、そう思って足を止める。その途端、私は糸が切れたかのように倒れこんだ。

もう既に服はびちょびちょで、肌に張り付いて気持ち悪い。

でもそんなことより…私はこれからどうやって生きていけばいいの…?ただ死ぬのを待つだけなの…?

「嫌だ」

咄嗟に言葉が出た。まだ死にたくない。まだ16年しか生きていないんだよ?

「何が?」

少し上の方で、高めの声が聞こえた。顔をあげてみると、そこには私と同じくらいの身長の男子が立っていた。