それにしても、あの手つき。乱暴に突っ込むならまだしも、最期にそんなふうに優しくしないでよ。
そんな風に訴えかけた私と彼の目が合う。
「さよなら、水無瀬月果」
そう言い、彼はペットボトルの水を私の口に注ぎ込む。
ごくり。喉が何回か鳴って、完全にその薬は口から消えた。
視界と意識がだんだんぼんやりしてくる。周りが白くなっていく感じがした。身体も軽くなって、まるで無重力の世界にいるみたいだった。
ああ、人生ってここで終わっちゃうんだな。
人生が終わるときってこういう感じなんだ。
でも、後悔しかない人生の中に甘さはあったよ。
少しでも甘さがあって、よかった。
たとえそれが偽りの甘さだとしても、彼を許せないとしても。