いくら私が逃げてもその薬は私の元へと迫ってくる、そういう意味ではなくただ単純に。
私はこの薬から逃げてはいけないんだ。
そうわかった。
そしてこれは私への罰なんだと悟った。
これ、というのは。
莉音を愛したことじゃなくて……きっと。
でも莉音を愛したこと自体は、後悔したくないな。
騙されたけれど、莉音には愛がなかったことがはっきりと分かってはいるけれど、私は幸せだったって言えるように、いつかはなりたい。
私の口元に、最後の笑みが浮かぶ。
「いいよ。その薬、飲ませて」
莉音の右手をチラリと見ると、もうペットボトルと薬が用意されていた。彼はそれを私の口にそっと入れた。すぐにその薬が溶けて、ほろ苦い甘みを感じた。私の人生を味で表現すれば、きっとこんな感じなんだろうと思いながら、薬を口の中でからからと転がす。