「別にこの身体自身が死ぬわけじゃないよ。水無瀬月果という人間の魂がなくなるだけ」
まだ理解できないのは私だけなのだろうか。
「簡単に言えば記憶を一切無くすってこと。
本当は愛樹のためにも死んでもらいたかったけど、愛樹がきっと許さないだろうから」
莉音も、道徳のどの字は心の中に残っていたようだった。
私はそれで構わなかった。
もう、どうでもよくなってしまった。
お母さんだって私が死んでもそこまで気にしてくれないだろうし、第一愛してくれていると思っていた彼は、本当は愛とは裏返しの感情を抱いていた。
私が悪いことは分かっている。けど、どうしても思ってしまうんだ。
なんでこうなってしまったんだろうって。
もうこの世界にいる理由なんてない。きっと私が死んだ方が、みんなにとって幸せになるはず…。
もう私の汚らわしい記憶が無くなるのであれば、それでいい。
痛い思いをせずに、この地獄から抜け出せるのであればそれでいい。
今まではこんな場面に合ったのならそう思っていたんじゃないか。
でも今の私は、ちょっと違う考えを持っていた。