本当なのか嘘なのかはわからない。けれど、今の私になす術はないことはよく分かっていた。
「呼んでくるよ」
彼がそう言って部屋をあとにする。一瞬だけ緊張がほぐれ、頭がくらっとする。でもこれで終わったわけじゃない。これからまだ少し、やることがある。
数分も経たないうちに足音が聞こえてきて、莉音とお母さんが姿を現した。
「月果」
「お母さん…」
私は自分の格好を見下ろして恥ずかしくなる。でもお母さんはそれに何か言うことはなく、自分から話し始めた。
「私はまだ月果に言えていないことがある。
前回言おうとしなかったのは、今日言うためだったからなの。
今日こそは、本音を話したい。じゃなきゃ、手遅れになるから」
手遅れになる?意味がわからない。私に時間がないのは確かにわかる。でも、何が手遅れになるの…?
お母さんは私の疑問を無視して話し始める。
「私はあなたのことを愛してなんかない」
最初の言葉から、私の気分はズンと重くなった。大体は分かっていたけれど、ここまでストレートに言われるのとは訳が違った。
「ただ、お荷物だとしか考えていなかった。出来が良い悪いは関係なくて、子供がいるってこと自体が辛かった。
でも、私は月果がそれを感じ取っていたのに気がついた。それが嫌だった。私が悪いわけじゃないのに、なぜ望まれて生まれてこなかった子供に愛情を注がなきゃいけないの?
そんな月果を養ってくれる人が欲しかった。だから頼んだの、この人に」