それは、私の代わりに愛樹ちゃんが耐えていた、ということ。

何をされても、私を売るような行為はしなかった。

なのに、私は…。

「ようやく分かってくれた?」

彼はにこりと笑みを浮かべた。私が無言でいると、金属のひやりとした感触が首に触れる。

「…答えろよ」

その笑顔は一瞬で獣のような目つきへと変わる。

「…分かっ、た」

と言うと、彼にまた笑みが戻る。

「じゃあ、分かってくれたところで。どうやって殺そうかなぁ」

「こ、殺す…?」

いきなりの響きに、私はおどおどとして尋ねる。

「そうだよ。人を殺したんだったら…まあ正確には殺させたなら…基本それが対等じゃない?自分も死んで、あるいは殺されて初めてチャラになるもんじゃない?」

「…」

否定もできないし、もちろん肯定だってできなかった。

「こっちはこんなに苦しんできたのに、彼女を殺させたその人自身がなんの罪にも問われてないって、おかしくない?

見て見ぬ振りした、それも許せないけどまだ大怪我させるだけで許したかもしれない。

でも、『知らなかった』?

愛樹が死んだことを?愛樹が辛い目に遭っていたことを?その時点で許せなかった。