莉音が白虎に入っていたのはともかく、なぜこれを渡してきたのか。

「こいつが坂口莉音に情報を売ってたの。私たちがしていること全部、あいつが盗聴器を持っていたからだったの。

多分だけどあいつが月果の後を追い回して、坂口莉音に全部聞かせてたんじゃないかな」

そんな…。

「だから、月果が坂口莉音に嫌な印象を持った時は、あいつから求められたでしょ?」

「…」

確かに、そうだった。莉音のことを不審がるたびに、彼は私の身体を求めた。

好きだと言ってくれた。

愛してくれた。

「そんなことって…」

「お話の途中で悪いけど」

誰かが私の言葉を遮った。見ると、そこには知らない男が立っていた。

いかにもチャラそうで、黒く染められた髪はチリチリだった。

これウィッグだな、と見ただけで簡単にわかってしまうくらいだった。

見た目は多分いいんだろうけど、そのにやついた顔が全てを台無しにしている。

「…っ!あんた、まさか今までの会話を聞いてたんじゃないでしょうね…!」

帆奈が怒ったように言う。

「もちろん聞いてたよ、雷神のお姫様?」

「…っ!」

帆奈が悔しそうに顔を歪める。

「雷神のお姫様とか言うからどんな子かと思ってみたら、結構美人じゃん」

帆奈の顔の輪郭をいやらしくなぞるその男。

「ちょ、やめ…」

「やめてよ」