うんとこしょ、と後ろに乗ると同時にバイクは急発進した。
「いきなり飛ばさないでよ!」
「ごめ、ミスった」
「もうちょっとゆっくりでもいい気がするけど…」
絶叫系は苦手ではないけど、かといって得意でもない。
それより前髪!こんなん何分も続けてたら絶対オールバックになっちゃう!
「そこらへんにバイクのヘルメットない?それ被っときな」
「それ乗る前に言ってくんない…?」
このスピードのまま手を離すなんて無理!
というわけで、ヘルメットをつけずに(正しくは付けられずに)目的地へと着いてしまった。本当は原付に乗るとしてもヘルメット着けなきゃいけないんだけどね。警察に会わなくてよかった!
「なんとかマッポに会わなくて済んだな」
「古くないそれ。いつもそうやって言ってるの…」
「なわけ。いつもはサツだし」
「あそ」
サツのほうがまだましだなとか思いつつ、私はお礼を言ってからその場を去った。
『着いた?』
スマホを覗くと、十分前にメッセージが来ていた。
『着いた。どこの店?』
と送ると、またすぐに既読がついた。
『パンケーキの店 しるこ』
『そこの影に隠れてて』
『わかった』
幸運なことに、そのお店はすぐに見つかった。行列ができているってほどではないけど、少しは客が並んでいるような店だった。
…それにしても、しるこってお店の名前のセンスが微妙すぎる。パンケーキの店なのにしるこってちょっと間抜けだし。くすっと笑みを漏らすと、私はその影に隠れた。