親切心だとは思いたいけれど、やっぱり私を家から追い出したいのかなとどうしても思ってしまう。
「お母様」
これまでずっと黙っていた莉音が、お母さんに声をかける。
「少し…」
少し、何?と思っていると、
「ここでも構いません。少しお話しさせてください」
「…で、あなたが」
「突然押しかけてすみません…あの、ありがとうございました」
「分かった。こちらこそありがとう。私からは何も言うことはないから。あなた、ちゃんと月果の…」
「もちろんです。最期までやり通します」
その言葉は、自信に満ち溢れていた。なんのことかはっきりとは分かっていないが、流石に恥ずかしくなる。
「…その言葉を聞けてよかった。じゃあ、よろしくね」
「はい。ありがとうございました」
「では失礼します」
お母さんはそう言ったきり、見送りに来なかった。
「…帰ろっか」
「うん」
「持つよ」
「…いい」
私はボストンバッグを強く握りしめた。これはきっと、私が持たなきゃいけないものだから。
きっとこれ以上の重荷を一生背負って生きていくんだろうと思いながら、私はボストンバッグを抱きしめたままとぼとぼ歩く。
「…」
「…」
「はっきり言っても良い?」