「…それより、私はお母さんの本音が聞きたい」

そう言うと、途端にお母さんの表情が曇る。

「何故そう言うの?」

「いくら傷つくことになっても、ちゃんと言われておきたいし、言っておきたいって思ってるから」

「…好きにしなさい」

お母さんが鬱陶しそうに言う。傷つくけれど、でも莉音が言う通り後悔したくないから。

「私、お母さんのこと、すごく嫌い」

露骨に嫌な顔をされるのはある程度想像していた。たしかにそうなるだろうとは思っていた。けれど私は話すのをやめようとは思わなかった。

「…お父さんがいないのは辛いかもしれない。私が出来損ないの子かもしれない。けれど、それを私に当たるのは違うと思うんだ。

私はお母さんの期待に沿えなかったかもしれない。それは本当に申し訳ないと思ってる。でも、私を別の視点からも見て欲しかったな、とは思う」

今日のために色々準備したというのに、なんともまとまりがない言葉になってしまった…ような気がした。

「…」

辺りには重苦しい空気が漂った。お母さんは眉ひとつ動かさずに私に言う。

「…そう。月果が私のことをどう思っているかは、よく分かった」

「…うん」

「私は、言わないから」

本当はお母さんからも本音を聞きたかった。けれど、今のところじゃ無理そうだということが分かった。お母さんは多分こう言うってことは、てこでも動かないはずだから。

「…分かった。聞いてくれてありがとう。…私、まだ莉音の家にいることにする」

「そう。好きにしなさい」

また『好きにしなさい』。本当に興味が無さそうだったのが悲しかったけれど、とりあえず言いたいことは言い終わったし…

「荷物。そこにまとめておいたから」

お母さんが指した方を見ると、そこにはボストンバッグが置かれていた。

「…ありがとう」