説明する段階で文句を言われそうだけど、彼は一応この国の騎士団長様だ。


門番もきっと私がジルをここに連れてきたら、態度を改めるに決まってる。


さて、回れ右して彼を連れてこようと動きだそうとする私を、門番は逃がすものかと私を取り囲んだ。


状況についていけない私を利用して、二人はどんどんと私を塀の壁に近づけていく。


「あの……証人を連れてきますので、そこをどいていただいても――」


「この場で証がない方がおかしいのだ。そういう口実で逃げようなどと考えていることぐらい、こちらには丸わかりだ」


まあそう思われるのも無理はない。


でも、子供と女相手にそんなに向きにならなくてもいいんじゃないの?


ジリジリと詰め寄ってくる門番達に打つ手はなく、私は男の子を庇うようにしながら一歩、また一歩と後ろへと下がる。


でも気づいた時にはもう、塀は私の背中に触れるか触れないかの位置にあった。


「吐け、この場に何しに来た。発言に寄っては血を流す覚悟をしろ」


「だから、私は通りすがりで……!」


無駄口を叩くなと叫ばれるや否や、門番の一人が私に槍を構え私の心臓を一突きしような勢いで睨みつけてくる。


ごくりと唾を飲みこの人達には話が通じないと、やっと理解した私だったけどもう遅い。


なんで私ってこうも面倒なことに巻き込まれるタイプなわけ??


「っ……!」


槍を構えた門番に気を取られた隙に、もう一人の門番が私の手首をギリリと力強く握りしめてきた。


振り払おうにも鍛え抜かれた成人男性に、こんな私が勝てる訳もなく。


抵抗しようものなら殴られてもおかしくないこの状況に、混乱して使えなくなった頭にはどうすることもできなかった。