体の向きを変える直前、私のすぐ横を一目散に駆ける男の子が屋敷の門の前で警備をする門番に声を荒らげながらしがみついた。
「お願い!助けて!!」
「なんだ?こいつ」
「ああ……大森林の魔女の子供だ。下手に関わるな」
必死に懇願する少年を、門番は面倒くさそうな顔で男の子をつまみ出すように追い払う。
それでもしがみつこうとしたが、そのまま力強く押し倒されると一人の門番が手に持っていた槍を突きつけられる。
恐怖心よりもどうしても助けて欲しい気持ちが強いのか、男の子は食い下がろうとはせず、しつこく門番に手を伸ばす。
「しつこい餓鬼だな……!!」
もう一人の門番が男の子に手を出そうとするのが見えて、私は咄嗟に彼を庇うように間に入る。
「おやめください!」
槍の矛先が私の首にスレスレで当たりそうになったのを見て、慌てて門番が槍を構えるのを辞める。
「子供に対して刃を向けるなんて……あまりにも酷すぎます」
「お前……そいつの連れか?」
「いいえ。ただの通りすがりです。ただ、あのままではこの子は怪我をすると判断して、止めに入らせて貰いました」
男の子を庇うように私は男の子の前に立つと、二人は怪しむように私を上から下までじっくりと見つめてくる。