妙にモヤモヤする気持ちを振り払うように、私はその建物よりも更に奥へと歩いていくと、今度は立派な御屋敷が私を出迎えた。


「やっぱり金持ちの考えることは何処も一緒なのね……」


どこまでも手入れが行き届いた広い庭に、高い塀に囲まれ門前では厳重な警備がされて、権力をこれでもかってぐらいに示している。


お金の使い方は人それぞれなのは理解しているけど、広い家にする理由は私にはちょっと理解が追いつかない。


王宮で生活していた頃も、異常に広すぎる部屋には中々落ち着かなかったし、その広さのせいで孤独感が増していた気もするし。


そもそも心地よい居場所というものが存在しない私には、どれだけ小さかろうが、安心する家があればそれで十分に思えてしまう。


……旅をしてからというもの、その安心感が常に傍にあるのはきっと一人じゃないから、なんだろうな。


そんな旅も明日無事にクリスタルを元通りにすれば、終わるんだなと少しだけ寂しくなった。


最初から旅の終わりは分かっていたし、これ以上彼らに迷惑をかけるようなことはしたくない。


そう頭では分かっているのに……変な気持ちが渦を巻く。


「何考えてるんだろう……私。帰ってリュードルを早く安心させなきゃ」


もう少し旅をしたいだなんて――そんなのおかしいもの。


自分にやれやれと首を振りながらこれより先には進めないと判断した私は引き返そうと、その場から足を動かそうとした。