この事実を知る人はいないから、お前が死ねば新しい聖女が誕生するのだ〜!とか馬鹿なこと言って、無理やり首を刎ねられることは多分ない、と思う。
いや、絶対命だけは差し出してやるもんか。
「先代から受け継いだ、クリスタルのペンダントがあるから聖女としてやっていけるなんて……なんか変な話しよね」
胸元で太陽の光を集めては輝きを放つ、淡いエメラルドグリーンの輝きを放つクリスタルのペンダントにそっと触れる。
これは聖女である証で、この国の聖女に代々受け継がれている、唯一無二の貴重なペンダント。
クリスタルは証だけでなく、聖女の力は己の力だけでは全ては発揮出来ず、クリスタルが持つ力によってその者を聖女と成す物だから、絶対に必要不可欠なもの。
住む場所も失った私は、証としてクリスタルを提示し、聖女としてこの辺境の結界調査と偽って、ギルドに寄せられる依頼を受けながら収入を得て、何とか命を繋いでいる。
公に聖女の存在が私ということが知られてないせいで、周囲からは半信半疑の目を向けられるけど、今に始まった話じゃない。
学園でもなんでこんな落第生が……という目で見られていたし、もう慣れっこだ。
仮に本当に国外追放を受けたら、一体誰が私の相手をしようとするだろう。
私もその立場だったら、疑って聞く耳を持つことはない気がする。
名もない聖女がクリスタルを掲げて、聖女と名乗ってくるなんて、怪しさ満載だし。