フェイムと共にジルの元へと足を動かし、遠ざかっていく馬車を見つめた。
「随分と親しい間柄なのね」
「あんたの目にはそう見えたのか?」
よく分からない微かに残っていた怒りをジルにぶつけると、ジルは言葉と共に重たいため息を零した。
「嘘よ。凄い嫌そうな顔してたもの。獣人ってだけであんな差別するなんておかしな人に、嫌な顔をするのも分からなくないわ」
「この領地の領主の娘だ。やけに俺に媚びを売りつけては下心丸出しにしてくる厄介な女だ」
「いいの?あんな態度取っちゃって。騎士団長の座を下ろされたりとかしない?」
「貴族の娘が、そんなことをする知恵も権利もない」
やけにイライラを表に出す姿に、少し意外な一面を見ている気がして思わず笑ってしまう。