必要以上に叱咤されたトウハさんだったけど、揺らぐことなく彼女に帰るようにと促す。
「招待人を増やすのも、ご領主様のご迷惑になるかと。今夜の突然の参加は控えて頂きたく思います」
埒が明かないと判断したのだろうトウハさんは、ジルに対して今度は訴えかけこの場を納めようとしていた。
「ちょっと!トウハ!何を勝手に――」
「そうですか。では、後日改めてお伺い致します。ルリナ様、時間は有限ですよ。今夜の晩餐会を楽しむ為にも、一刻も早く屋敷へと戻るのが正解でしょう。それに主の為を想う素敵な従者ではありませんか。領主様は素敵な従者を貴方につけてくださったのですね」
ジルにそう言われて、ルリナさんは従うしかないと判断したのか、まるでお姫様を馬車へと誘導するように優雅にエスコートされるルリナさんは、渋々ぶつぶつ小声で文句を馬車へと戻る。
馬車へと乗る前にふと、私と目が合うや否や眉間にしわを寄せてギロリと私を睨みつけてから馬車に乗り込み、トウハさんが扉を閉めるよりも先に乱暴に扉を閉めた。
ルリナ様の無礼をどうかお許しくださいと、トウハさんは私に頭を下げ、そのまま手綱を握り直して馬車を動かして街のある方へと進んで行った。
まるで嵐が去った後のような静けさに、腹の中で何かが煮えたぎっていたのがゆっくりと落ち着いていく。